腹の重みで目が覚めた。
見ると、いつの間にか九龍が皆守の脇に横たわり、こちらの腹へ頭を乗せて眠っている。彼の分の場所を空けておいたわけではないから、窮屈そうに見を縮めていた。
風呂上がりに暇つぶしで彼の部屋へ寄り、報告書とやらが仕上がるのをだらだら待っていたはずだった。携帯を出すと、時刻は午後九時半。寮監の点呼はとうに終わっている。
点呼が完了するまでの間は、部屋の鍵を開けておく決まりだ。
見られたかもしれない。
皆守はげんなりしたが、今さらどうしようもなかった。
「おい、起きろ」
肩を揺するが、九龍は未だ夢の中だ。
「おい、九ちゃん。……ちッ。だいたい、なんで一緒に寝てるんだよ。床で寝ろ、床で」
彼の頬をきつめにつまむ。さすがに痛かったのか、九龍がぼんやり目を開けた。
「……雨降ってる?」
言われて耳を澄ますと、雨粒が屋根を叩く音がかすかに聞こえた。
「そうらしいな」
「ん……」
九龍は再び瞼を閉ざし、皆守の腹に頭を落ち着けた。
そんなところへ落ち着かれても困るが、彼を叩き起こして退け、自分の部屋に帰るのも面倒だ。年季の入った男子寮の廊下は、雨の夜には決まって底冷えがするのだった。
体の一部が乗っているだけなのに、皆守の腹はずしんと沈む。人の頭は案外重いのだと知った。それに熱い。
他人の熱は少々不快だったが、雨音に耳を傾けているうちに、引き込まれるような眠気が戻ってきた。
眠るのはいい。何も考えずに済む。
九龍が身じろぐと、髪が布越しに擦れる感触があった。
これだけ近くにいるにもかかわらず、眠気の殻に守られて、最近おなじみの切迫感に急き立てられることはない。墓守と盗掘者ではなく、ただの悪友同士であるかのようだ。
彼の頭の中には、ただの高校生は知らない、《秘宝》を得るための知識が詰まっている。
その中に占める皆守の記憶の割合はどれほどだろうか。普段の懐きっぷりそのままに多いのかもしれないし、あるいはあの態度はビジネス用であって、ほんのわずかしかないのかもしれなかった。
どちらにせよ、頭を吹き飛ばされるその瞬間まで、彼が覚えていてくれるといい。
皆守もきっと、この重みと熱を忘れないだろうから。