なぜか、高校の同窓会に参加していた。話す相手もいないのに。
会場は新宿の居酒屋で、店内にはクリスマスの装飾を施してある。ちんけなツリーの星がぴかぴか光っていた。
輪の中心に、お団子頭の騒がしい女がいる。間に数人おいて、顎に傷のある男。髪の長い美女。
愉快な面子だが、名を思い出せない。すぐに興味を失う。早く終わればいいと思っていた。
「皆守くん」
懐かしい声に呼ばれ、皆守は空になったジョッキを置く。かつての恩師が隣へ座るところだった。
「久しぶりね。元気だった?」
そういう彼女のほうが面やつれしていて、皆守は意地を張るのも忘れ、あんたは、と問い返していた。
「私のことはいいの。あなたは?」
重ねて尋ねられ、まあ一応食っていけているし、病気や怪我もないし、元気だと答えた。そんなことより、体調が優れないなら早めに中座してはどうかと提案する。このまま目の前で倒れでもしたら。焦燥に駆られた。
彼女は皆守の返答を聞き、満足そうに微笑む。
「安心したわ」
皆守の心配などどこ吹く風で、勝手に笑っている。長い髪からかすかに花の香りがした。
「ところで、あいつは……」
「あいつ?」
部屋を見回すが、彼の姿はない。まさか来ていないのか。皆守でさえ顔を出しているというのに。
ラベンダーの芳香に包まれて、皆守は呟いた。
「九ちゃん」
「はーい」
目を開けると、九龍がナイフの手入れを終えてベストへ戻していた。
たたん、たたん、と車輪が枕木を踏む音。これのせいでまどろんでしまった。柔らかな四月の陽光が宗教画のように車窓から差し込んでいる。
「俺のこと呼んだ? それとも寝言?」
「寝言だ。そろそろ着きそうだな」
答えて、伸びをする。
寝言以外の何物でもない。倒れたらどうするも何も、あの人が起き上がれなくなったのは皆守がきっかけだった。
「この列車を降りたら間違いなく、武装した《
「まったく、頭の痛くなるような現実だな」
あれは夢だった。後悔の種を自分の肉体という土へ植えずに済んだ、存在しないヒーロー。
本物の皆守は、こんな辺境の異国で乗り心地の悪い列車へ放り込まれ、馬鹿げた数の敵陣に突撃しようとしている。
「あと三十秒で着くよ。準備オッケー?」
それなのに、相棒は目をキラキラさせて戸の前に立っていた。
「ああ。いつでも行けるぜ、九ちゃん」
「頼りにしてる。何せ、こっちはとっくに弾切れだし」
現実はいつも笑ってしまうほどひどい。それでも、ヒーローではない皆守は、この場所で彼と生きていく。